「欠落」の誕生 -シェフの頭は忙しい-

作品を作り出す時に自分の中に湧いてくる感情と言葉たちは大切な役割をしてくれる。

私の調香スタイルは言葉が先に走り出す。

音楽や小説、日常の会話から気になる言葉がピックアップされてスマホのメモには脈絡のない言葉たちが無数に並んでいる。

その言葉を拾い上げた前後では自分の中にどこかネガティブな感情が存在する。

しばらくその感情を咀嚼してメモの中からタイトルになりうる言葉を探す。

そうして実体験ベースの世界観の構築が始まる。

詩とタイトルが出来上がった所でようやく香りの処方作成が始まる。

その世界観が何を伝えたがっているのか、それに見合う香調や香料を考える。

キーとなる香料が決まるとそこからは比較的早い。ジグソーパズルのような作業が始まる。しかしキーが定まらないと制作は迷宮入りしていく。

現在もお蔵入りとなっている香りはいくつもある。詩と世界観と香りとタイトルがどこかチグハグで納得できないからである。

その中でも「欠落」は全てが絡み合った傑作の一つだと思える。

ぜひ触れて頂きたい作品である。

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