調香師の目-地球環境-
ふだん使っている香り製品が使えなくなる日が来るかもしれません。
調香師として、環境問題は私たちの仕事の基盤に直接影響を及ぼします。最近、パチュリオイルの供給がストップしたことは、私たちに大きな衝撃を与えています。パチュリは調香で重要な役割を果たす香料で、その温かみや奥深さを生かして香水に厚みと複雑さをもたらす、まさに「香りの心臓」とも言える存在です。この供給停止が一時的か恒久的かは未だ不明ですが、背景には環境の変化が深く関わっています。
パチュリは熱帯気候を必要とし、主にインドネシアなどのアジア地域で栽培されています。しかし、異常気象、洪水、干ばつ、さらに森林伐採などによる生態系の破壊が、栽培環境を危うくしています。また、パチュリオイルの需要が高まる一方で、持続可能な栽培が行われなければ土壌が劣化し、長期的な生産能力が低下する可能性があります。
調香師としてできることは、まずサプライチェーンを見直し、持続可能な栽培方法やフェアトレードのパチュリを選ぶことです。さらに、消費者に対してもこの問題を共有し、環境に配慮した香り製品の選択を促すことが重要だと考えています。私たちが日常的に使用する原料がどのような環境で生まれ、どのように人々の生活に影響を与えているのかを知ることは、持続可能な未来を築くために大切です。
環境問題は一調香師の手を超えた大きな課題です。パチュリオイルの供給停止は、私たちに環境と共に生きる意味を再確認させる一つの契機であり、この現実を受け止め、新しい道を模索するきっかけとして捉えるべきでしょう。
そんな現実と、なのに理想の香りを追い続ける姿勢はどこか矛盾を抱えているようにも思います。
なぜ人間は香りを求めて、なぜ私は調香をしているんだろう?そんな疑問を再認識した夜でした。