Blog/
ブログ
香りの豆知識

シャネルのNo.5、香りの半分は臭かった?

まず初めにお伝えしておきたいのは、No.5が臭いとか、私の学生時代の原料コメントがNo.5を軽蔑しているとか、そのような間違った解釈を与えたくはないので、そうではないという事を前書きさせていただきます。
シャネルNo.5は1920年、調香師エルネスト・ボーによって開発された名香です。100年以上の年月を超えて、今もなお愛される伝説の香水です。
これは制作側に立った今、敬意を表するほかありません。このシャネルNo.5のストーリーは調べればたくさん情報が出てきますので、ここでは使われた香料について話を進めていきます。

まず、何が革命的だったか。合成香料Aldehyde C-10〜C-12をふんだんに配合した所。当時は天然香料が中心で調香が行われていたという話があります。
他にも特徴的な香料の使い方と絶妙なバランスがあるのですが、今回はこのアルデハイドもしくはアルデヒドについて記事を書きます。私が専門学校で調香を学び始めた頃のノートが出てきたのでそれを掲載すると。
「Aldehyde C-11 Nic」の特徴を→嘔吐した後の喉がイガイガする感じ。風邪を引いてお風呂に入らずに寝て、朝起きた時のパジャマの香り。とても動物的、一般的には好まれない、ソーダみたいな感じもする。などと書いていますね。どうですか、いい香りとはほど遠いように思いませんか。
初めて合成香料に触れた時のメモであり、かなり稚拙ですが表現としては大筋間違っていないと感じています。
コレがいわゆるファッティ(fatty:油臭い)であり、ケミカルな香りであるという事を時間の経過と共に学んでいきました。

で、話を戻すとこの一般的には好まれないと表現した香りをメインで使おうという発想自体が天才的という事です。
誰も気づかなかった・やっていなかった事をやるから天才と認められるんだなと、痛感するストーリーです。
Aldehydeは単体では上記のようにパワーのある香りですが、濃度と組み合わせによって周りの香料を引き立てて、想像以上の高級感やまとまり感を演出します。料理でも創作料理を提供しているお店や、普段いかないお店に行ってみると斬新なアイデアに驚かされることがありますね。この食材をメインで使うんだ!とか、この食材をこれと組み合わせるんだ!みたいな感じです。
香料の業界はIFRA規制というものがあり、安全性の為に年々使える香料が制限されているのは事実です。このIFRAについてはまた別の記事で詳しく書いていこうと思います。この規制により同じ処方・同じ手法が使えなくなるのもまた香りの世界の奥深さ。

すでに世の中にあるものを使い、規制の範囲の組み合わせと濃度で斬新さを生み出す。誰も予想していない球で見逃し三振を取るような、そんな光景を目指して、私も日々香りと向き合っています。
Aldehyde C-11 Nicの香りを試してみたい方は調香教室でお会いしましょう。
楽しいですよ!お気軽にどうぞ!